小話弐(アニメ版)―今、何してる?―今、何処に居る? ―今、誰と契約してる? 断ち切れない絆 「…ダメだな、俺は…。」 コゲンタはポツリと呟いた。 ―本来、式神と云う存在は現在契約している闘神士の事を第一に考えなければならないのだが。 どうしても自分に名付けた前契約者―ヤクモの事が忘れられず、 神操機の中で時折物思いにふける時があった。 (まだ生きてるって分かってるから、余計こんな風に思うんだろうな…) コゲンタは神操機越しに空を見上げた。 そこには昔と変わらぬ月があった。 ◇◇◇ 同刻、伏魔殿深部。 そこでは一人の闘神士が闘神符を手に、迫り来る妖怪達と戦っていた。 (流石に分が悪い、か…) そう判断した彼は闘神機に手を伸ばした。 「式神…、降神!」 喚びかけに応じたのは彼の使役する五体の式神の内の一体、"雷火のタカマル”であった。 闘神士は常識レベルよりも速く、そして正確に印を入力していった。 彼の周りに存在した妖怪達は数分も経たない内に全て消滅した。 ふぅ、とヤクモはその場に座り込んだ。 「…………。」 タカマルは無言で彼の方を見た。彼なりに心配しているらしい。 「大丈夫…、大丈夫だ。少し休めば回復する。」 「…了解しました。しかし無理はなさいませぬよう…。」 主を気遣いつつ、タカマルは闘神機の中に戻っていった。 (無理はするな、か…。まさかかつての敵に心配されるなんて思ってもみなかったな。) ヤクモはゴロン、と寝転んだ。 (コゲンタも…今の契約主に同じ様な事言うんだろうな。) ヤクモは自分が以前契約していた式神の事を思い浮かべ、自然と笑みをこぼした。 そしてすぐにその表情が曇った。 (もしも…コゲンタの今の契約者が地流や神流の者達だったら…) 有り得ない話ではない。式神は契約主を選ぶ事が出来ないのだから。 (そのとき俺は…コゲンタと戦えるのか?) そう考え、すぐに首を横に振り、 (いや…もしそうなっても全力を出して倒す。それが…コゲンタを解放する事にも繋がるのだから…) 気持ちを切り替えた。そう考えなければ、目的を達成する事など出来ないのだから。 ―そして、ヤクモは少しでも身体を休めるため、眠りについた。 コゲンタの方はリクと契約していたからヤクモと再会するまで何ら問題はないと思ったけれど、 ヤクモの方はコゲンタと再会するまで結構不安でいっぱいだったんじゃないかなぁ、と思いまして。 本文中にも書きましたが式神は契約主を選べない訳ですから。 2005.06.10 up |